くじ引きなしの一番手!恵比須神を祀る楼閣を持つ山車

★敦賀市指定文化財(指定:1980年/昭和55年)

 敦賀の山車の多くは戦災で失われましたが、焼失を免れたうちの1基が、旧大内区(現在の元町)の御所辻子山車です。

 この山車には、舞台座の後方に三層の楼閣が設けられており、祭り当日、この山車を曳く町内にある恵比須神社の神様を祀って巡行します。これは御所辻子山車だけの特徴で、山車の曳き出し順は“くじ”なしの一番手と決まっています。

~御所辻子山車の飾り物(現在)~

合戦:大坂冬の陣  
武者人形:後藤基次・上杉景勝

~御所辻子山車の水引幕~

 御所辻子山車を飾る水引幕の図柄は、主に中国故事から題材が選ばれています。中国故事は、吉祥のイメージなどが好まれ、絵画・彫刻など様々に用いられました。それぞれの題材は、中国故事に登場する伝説上の人物『鯉に乗る琴高仙人きんこうせんにん』『許由巣父きょゆうそうほ』『張陵と司馬季主ちょうりょうとしばきしゅ』で、俗世を離れ、出世や高い地位を嫌った高潔な人物や、神通力を得た仙人など、故事成語の由来となった逸話や古代中国の神仙思想、道教における理想の人物像が生き生きと表現されています。

 また、出典はよくわかりませんが『西洋人物に象』の珍しい図柄の幕もあり、西洋(中国から見た西域の人々。インド人と見られる)人物と、インドで神聖視される白象が描かれています。

 平成19・20年度には、江戸時代から使用されて劣化した幕を保存するため、元の幕を基に復元新調されました。この時、昭和初期以降に老朽化のため消滅してしまっていた『張陵と司馬季主ちょうりょうとしばきしゅ』の幕が、古写真の分析等により推定復元されました。

江戸時代の町名紹介 ◆御所辻子町(ごしょのずしまち)◆

仲哀天皇が敦賀に行宮を設けられたことに由来する町名と伝えられます。